エイコンブ様  『スープ入り!?』
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スープ入り!?



「美味いっ!!」
 アルベルトはジェットが作った大豆のスープを掻き込んだ。
 腹が空いているのはもちろんだが、このスープは絶品であった。
 BG団を逃げ出した頃のジェットはお湯を沸かすのが精一杯で、目玉焼き一つ焼けなかったのだが、張々湖やジョーの指導の元、まあ、不自由がない程度には料理が作れるようになったわけである。
 そして、ドイツに遊びに来る度に、その腕前を披露していくのであった。
 徐々に料理の腕を上げていく様を見るのはとても楽しいことで、アルベルトはその味を堪能していた。しかも、恋人である自分の為というのもあると知ってからは、積極的に味見役を買って出ていた。
「いつもとスープが違う気がしたけど、何を使ったんだ?」
 アルベルトがそう聞くと、ジェットはにっこりと笑った。そして、スープが入っていた鍋に突っ込んであったお玉で中身をかき回し、何かを掬い上げた。

「……★ッ………△◎×+−〜≪」

 アルベルトの目の前にはお玉にちょこんと乗っかった、ジェットにサイズを覗いてそっくりな物体であった。いや、ひょっとしたら、妖精って奴なのだろうかと、意味不明な叫びと共に噴き出してしまったスープを拭き取るのも忘れて、アルベルトはソレを見ていた。
「で、何だ」
「何だって、小人さんだ。あんたにもちゃんと10人いるだろう?」
「小人さん?」
「ああ、オレも知らなかったんだけど、小人さんで出汁をとると美味しいスープが出来るんだそうだ。でも、小人さんは平気なんだって言うんだ。それどころか体調が良くなるらしいだよな?」
 ジェットの語尾の”な”に合わせて、小人さんも”な”とジェットと同じように口を開いている。声が聞こえたわけではないが、そう言ったように感じたのだ。
 アルベルトは小人さんなんか知らない。
 だいたい、最先端の科学技術によって造られたサイボーグである自分達にそんなメルヘンチックな物体が添付されていたなんて、今の今まで聞いたことなどなかった。
「って、全員に小人さんがいるのか?」
「辺り前じゃないか? あんた今更、何、言ってんの」
 ジェットはそう言ってから、ああそうかと一人で納得した。
「だから、あんたの小人さん荒んでるんだ。今まで、知らないからって相手してやってないんだろう。ダメだな、ちゃんと面倒みてやらないと小人さんは荒むんだぜ。小人さんがいるから、俺達はサイボーグとしての能力を発揮出来ているんだ。あんたのミサイルだって、ちゃんと小人さんが軌道修正してくれてるし、オレの飛行だって、小人さんが手伝ってくれる。あんたの周りにはちゃんとあんたそっくりな小人さんが居るじゃないか??」
 初耳だ。
 だからって、はいそうですかと、そんな現実を受け入れられるわけがない。
 けれども、わらわらとアルベルトの視界を過ぎるのは、お玉に乗ったジェットと同サイズの自分にそっくりな様々な色の防護服を来た小人さんであった。
 台布巾を掴みテーブルに零れたスープを拭き取る者、アルベルトのシャツについたスープをタオルで拭き取る者、あるいは着替えを持って来る者。数を数えるとちゃんと10人居る……。
「って……」
「ほら、ちゃんと居るだろう」
 アルベルトは頬がひくひくと痙攣しているような引きつった笑いを零すしかなかった。





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