魅惑の恋
「ジェット」 アルベルトのドイツ語訛りの英語が、ジェットの耳に優しく注ぎ込まれる。 互いの気持ちを知ったのは、もう随分昔だったけれども、互いに触れることはBG団のサイボーグ研究所いる限りは無理であり、フライベートなど存在しない刑務所のような生活が、好きだと、恋していると互いの気持ちを確認していたとしても、二人は手を繋ぐことすら、キスをすることすら許されはしなかった。 BG団を倒し、ようやく手に入れた自由。 そして、ジェットはアルベルトと肉体的な関係を持つ一大決心をして、ベルリンを訪れて、今、その腕の中に収まっていた。 一度だけ、BG団との決戦の直前、ドルフィン号の中であわただしく交わした触れるだけのキス。それが、二人の今までの長い時間に派生した唯一の触れ合いであった。心がどんなに触れ合っていても、躯が触れることのない恋は、長い時を経てようやく成就しようとしていた。 「アル……」 ジェットもまだ呼びなれない恋人の名前を呼んだ。今日始めて、アルと呼んだのだ。そう呼んで欲しいと言われて舌を噛みながらも、頬を染めながらもそう呼ぶと、彼が本当に嬉しそうに返事をしてくれる。 恋人同士なら当たり前の距離。 互いを腕の中に収めて、吐息が掛かるくらいに傍に躯を寄せて、互いの瞳に見惚れていた。 ブルーグレーの北の海を想像させる厳しくも優しく豊かな色を持つアルベルトと、青く晴れ渡る南の海を彷彿とさせる抜けるように明るい朗らかな色を持つジェットは互いの瞳に見入っていた。こんなに近い距離で互いの顔を見たことなどなかったからだ。 自然のことのように二人の瞳が閉じられて、互いの距離がゼロになっていく。小さな音を立てて口唇が触れ合い、そして啄ばむようなキスを繰り返す。幾度目かのキスの後、アルベルトの声に促されて顔を上げたジェットを見詰める優しい瞳と恥じらいながらも、真摯に見詰め返そうとする瞳が一つに解け合っていく。 「ジェット」 アルベルトの声に促されるように白い薄い瞼が閉じられて再び、あの南の海が見えなくなる。代わりに熱い吐息を含ませたジェットの呼気が口唇を皮膚を通して、伝わってくる。ぐいっと強く細い腰を自分の方に抱き寄せるとジェットは恥らうように身を捩った。 何度も、何度も、触れるだけのキスを繰り返して、そして、ジェットの息が僅かに早くなったのを見越して、その薄い口唇を舌で突つくと、誘い込むように口唇が開きアルベルトの舌を受け入れた。アルベルトが自分の舌を絡めようとするとジェットの舌がするりと逃げる。それでも強引にねじ伏せて自分のモノにするとその抱いた細い腰がひくりと跳ねる。 ジェットの男性経験について、知らぬわけではない。 それでも、今は今だし昔は昔だ。それを割り切れない程にアルベルトは子供ではないし、その程度の拘りでジェットを手放したいわけでもない。 歯列を撫で上げて、唾液すらも吸い取る強引さでジェットの腔内を犯していく。まさに、蹂躙に相応しい、激しい一方的なキスであった。 確かに、ジェットは躯の経験は豊富であった。 男娼として日銭を稼いでいた日々があったから経験値は高い方であろうが、キスは言うほどには上手いわけではない。だいたい、男娼相手にキスを求める者は少ない。男を喜ばすテクニックにかけては確かに長けているが、キスはあまり経験のないジェットであった。 アルベルトのキスは濃厚で、今まで経験したどれよりも、ジェットは感じ入っていた。キスだけで逝ってしまったという話しを聞いて嘘だと笑っていたが、あながち嘘ではない気がする。このまま、激しい口付けを続けられていたら自分がそうなってしまいそうだ。 恥ずかしさを紛らわす為に、流し込んだアルコールが今頃効いてきて泥酔する程ではないが、ふわふわと躯が浮くような好い心持になってきてしまっていた。 キスに酔っているのか、アルコールに酔っているのか境界線が曖昧になっていく。 だから、ジェットはその先を考えなかった。 アルベルトにキスされるその心地好さだけに酔い痴れていて、その先をアルベルトが望んでいることを頭から無理矢理追い出していた。 アルベルトの手が背中や肩に這わされる。硬い鋼鉄の手の感触がパジャマの上からでも冷たさを伝えてきて、奇妙な気分になるけれども、意識のほとんどはまだキスに攫われていて、ジェットは男の堪え性のなさをすっかり、忘れ去っていた。 「ジェット……いいか」 ジェットを陥落せんとばかりに容赦なく攻めていた口唇が離れ、ぼんやりと潤んだ瞳にアルベルトのブルーグレーの瞳が当てられて、そばかすの痕の残る目元にアルベルトの容赦を知らぬ口唇が降って来た。そして、そのまま耳朶へと移動した口唇はそうジェットに告げる。 今更、NOとは言わないつもりで、決心をしてベルリンに来たけれども、だからと言って恥ずかしさがなくなるわけではない。 そうあの頃は裸で足を開いて男を誘っても恥ずかしいとも何とも思わなかったのに、どうしてなのかアルベルトに既に勃ち上がっているペニスを下着とパジャマ越しに触れられるだけで、恥ずかしさの余りに目元に更に鮮やかな朱が散ってしまう。 「っ……ぁあ」 触れられるだけなのにぐっと体積を増すペニスの恥じらいのなさに、更にジェットは頬に艶やかな朱の花を咲かせる。 男を歓ばせる手管を知っているから、男を抱いた経験のないだろうアルベルトに気持ち好くなって男同士のセックスも悪くないと思って欲しいとそう覚悟していたのに、いざ、その腕の中に囲われてしまうと、躯が自由に動かない。 必死で動かしてもやんわりとアルベルトの腕で押し返されてしまうと、それ以上、動けなくなってしまうのだ。 アルベルトに触れられるだけで、自分からアルベルトに触れられない。 触れて、彼の劣情を満足させてあげたいと思いつつも、躯が痺れたように言うことを聞かない。 その間にも、アルベルトの手は遠慮なくパジャマと下着の隙間をかい潜ってペニスに到達していた。鋼鉄の手で握られて、ジェットは細い腰を戦慄かせた。 鋼鉄の手を持っているのはアルベルトだから、アルベルトが触れていると知覚出来る。それだけなのに、どうしてだが、躯がいつにない快楽を訴えて、更にジェットの目に見えない自由を奪っていってしまうのだ。 「っああ………っぁあん!」 鼻に掛かるように喘ぐ声は自分を抱いた男達が一番、興奮して喜ぶ声だった。もうそれが、自分の喘ぐ声になっていて、ジェットは恥ずかしさの余りに、更に躯が動かなくなってしまう。 「すげぇ。お前、もうこんなにしてる」 アルベルトの揶揄するような声に更に羞恥に染まる肌は艶やかになり、キスで濡れた口唇から漏れる喘ぎ声は甘い音色を含んでアルベルトの耳に届けられ、アルベルト自身も自分の手で乱されて羞恥を露わにする、とても、男経験豊富と豪語するジェットとは思えない初々しさに、征服欲が肥大して止まらなくなっていってしまう。 右手でペニスを握っているだけなのに、躯を戦慄かせて、縋るようにジェットの手はアルベルトのシャツを握り締め、目元を染めながらも熱い吐息を吐いているその姿にえもいわれぬ色気を感じてしまうのだ。 彼のこの可愛らしいペニスを口に含んで、もっと盛大に喘がせたい。 腰を振って無意識にアルベルトを誘う様が見てみたいと、思えてしまった。同性とのセックスの経験がアルベルトには全くなかった。でも、ジェットが好きだと自覚した時には、自慰行為の対象は全てジェットの姿に転化されていた。見たこともないジェットの裸を何度も妄想していた。 自由になってゲイの雑誌を見てみたが、そう不快には思わなかった。それよりも、ジェットのあの細い躯を知りたいと思った。抱き締めて、触れてみたいと願っていた。着替えるジェットの姿にすら興奮する自分がいた。 自由になってからは、日々その妄想は鮮明になるばかりで、毎晩のようにジェットを抱く妄想を頭に描き続けていた。そう、今のようにしたいとずっとアルベルトは思っていた。その願いが叶う今、躊躇はなかった。ペニスに触れても愛しいと思えるばかりで、不快感も違和感もなかった。 妄想の中で触れていたジェットのペニス同様に熱く萌えて、アルベルトの愛撫を待ち侘びている姿がある。 一刻も早く、自分の目でその姿を見たかった。 触れられて目元を染め、漏れる喘ぎを飲み込もうとするジェットだから、慣れていたとしてもゆっくりと愛してやりたいと思うが、自分の欲望が先走ってしまう。がっつくような歳ではないのに、セックスを覚えたての少年のように、肥大する欲望が止まらない。 パジャマのズボンと下着に手を掛けて、まるでバナナの皮でも剥くように一気につるりと下半身を夜気に全て曝してしまう。恥ずかしいとばかりにジェットの足が閉じられて、陰部を隠そうと無意識に伸びた手を捕らえて、アルベルトは雫を垂らして奮えるジェットのペニスに顔を近づけた。 ジェットの匂いがする。 赤味をおびた金色の陰毛に囲まれて健気に震えるジェットのペニスが不思議と、愛しいものに見える。愛しくて食べてしまいたいくらいに、可愛らしいと思えてしまった。 衒いもなくソレに口唇を寄せると、ジェットの躯が逃れようと蠢いた。させるものかとアルベルトはジェットのペニスを深く口に引き入れると、口の中にジェットの匂いが広がった。甘酸っぱいラズベリーにも似たその匂いは厭だとは思えずに、思いっきり息を吸い込み、口唇を窄めて形を確認するかのように何度も顔を上下させると、艶やかなジェットの喘ぎが高くなる。 「っいゃあ……ダメッ…、ぁああん……」 軽く口唇を窄めて愛撫するだけなのに、気の毒なくらいにジェットは嬌声を上げて、腰を悶えさせる。逃れようとする仕草をしてみたかと思うと、腰をアルベルトに押し付けるような真似もする。そして、掴んでいた手を離すと、その手をジェットは自分の顔へ持っていき、その快楽に満たされた顔を隠してしまった。顔を見るのはいつでも出来る。でも、今は、このジェットの躯の全てを見てみたい欲求を満たしたいアルベルトがいて、ペニスを口に含んだまま自分のシャツの胸ポケットからチューブを取り出して中身を鋼鉄の掌に乗せた、それをペニスよりももっと秘められた場所に塗り付けるとジェットの声は更に高くなる。 入り口に塗り付けて、円を描く様に何度も、何度も執拗に入り口にジェルを浸透させていくだけなのに、ジェットの其処は綻んでいくようですらあった。 「ひゃぁ………んん………っあああ……い、いゃ………ァルッ」 ジェットは正直に困っていた。 触れられるだけで、腰が痺れて動けなくなりそうな悦楽に支配されて、アルベルトに口に含まれた時はそれだけで達するかと思うが程に、意識が一瞬だけ白くなった。仕事で抱かれていた時にも、BG団で幹部達に慰み者にされた時にも、感じなかった強烈な快楽だ。もっと淫らなセックスは経験しているけれども、ただ、口に含まれただけて意識が飛びそうなセックスなんて知らない。 アルベルトに口で愛撫してもらうことに抵抗を感じたのは一瞬で、もう次の瞬間にはその悦楽の虜になってしまっていた。厭とは口で言いつつも、躯は厭だとは思っていない。 厭というよりは、淫らに乱れる自分が恥ずかしい。 アルベルトの手は遠慮もなくジェットのアナルにも伸びていてローションが塗られる感触がジェットには分かっていても、躯は自分の意志に反して、アルベルトの意志を叶えようとしてしまうし、口からは否定しながらも喘ぐ声しか漏れてこない。 本当は、自分がアルベルトを愛撫して自分のテクニックでメロメロにして男も悪くないとそう思わせたかった。でも、反対に自分がこれでは、骨抜きになってしまう。厭ではないけれども、ただ、恥ずかしくて、どうしたら良いのかジェットには分からなくなってしまうのだ。 しかも、鋼鉄の手が1本とアナルに侵入を開始する。 「っあああああああっあん……………っはん」 つるりと入ったその硬い感触に、背筋を凄まじい電流が走り抜けて行き、躯が瘧のように奮える。膝が笑い足も閉じられなくなり、サイボーグの躯が壊れてしまっかと思う程に自由にならない。躯が自由にならなくとも、どんな男に抱かれていても意識はいつもクリアーで感じた振りをしていたのに、今はそんな余裕はない。 この程度のセックス、何度も経験しているはずなのに、そのどれとも違う。感じ入り過ぎる自分の躯が、心が、分からないジェットがいた。好きな相手とセックスをしたことがジェットはなかったのだ。好きな相手に触れられるだけで、躯が奮えることや、触れられただけで、快楽に肌を震わせてしまうようなことですら、愛する者同士では当たり前だと言うことを躯だけは大人で、心は少年のジェットは知らないのだ。 男性経験がなくとも恋愛においては百戦錬磨のアルベルトに勝てるはずはなかった。 何度も鋼鉄の指を抜き差しされる。その鋼鉄の指の凹凸部分すら感じてしまう程に内壁が敏感になっていて、一つの快楽も零すまいと自然と腰が揺れてしまう。1本挿れられることぐらい何でもないのに、どうしてアルベルトとだと、これ程の快感を覚えるのかとジェットは侭ならぬ躯を持て余しながらも、それを考えていた。 「挿れていいか」 既に鋼鉄の指が2本を挿れられている。鋼鉄の指は普通の男の指3本強の太さがある。2本の指を擦り合せるように動かされると、内壁がその感触を拾って、腰を悶えさせてしまう。もっとと、アルベルトが欲しいと自然と誘うように足が開いていく。 もっと太くて硬い、確実なモノが欲しいとジェットの躯が叫び始める。慣れた躯はアナルを愛されないと抱かれたと言う気になれなくなっている。男のモノに貫かれて、抉られ、揺さぶられないと、快楽を得られない躯が疎ましい。 そして、それがまたジェットには恥ずかしい。 淫乱だとは思われないのかと、朦朧とした意識の隅でそんなことを思うけれども、それは簡単に消えていく。腰を浮かせてYESとの意を伝えるとアルベルトがジェットの足を抱えて、そのアナルにアルベルトのジェットの媚態だけで、十二分に滾った牡を押し当てる。その堅さにぞくぞくと背中に寒気が走る。感じ過ぎての寒気だ。 「っあん………っは、っは……っくう」 アルベルトが侵入しやすいようにと経験で躯が勝手に浅く息を吐かせて力を抜く、解されていたとは言え、十分ではないことを躯だけが知っていてジェットのアルベルトに酔われている意識とは裏腹に躯が勝手にそう動いてしまっていた。 押し当てられるアルベルトの感覚が、ジェットに更なる眩暈を起こさせる。自分は触れてもいないのに、挿入が可能なくらいに固くなっているということは自分の姿に感じていてくれたということだ。男に抱かれて乱れる自分を見て、興奮してくれたのだ。嬉しいと供に、乱れている自分を自覚して朦朧とした意識の下で羞恥の彩りを肌に散らした。 アルベルトが侵入してくる。 こんなこと、初めてではない。 圧迫感があっても、バックバージンを僅かな金で売って、痛い思いをしたのとは違う。思い出したくもないロストバージンだった。 でも、初めて好きな人を迎え挿れた瞬間にジェットは今までに感じたことのない、甘やかな何かが躯の隅々まで行き渡るのを感じた。仕事や生き伸びる為に切り売りしていたセックスではない。どう言ったらいいのか分からないけれども、初めての経験で、ジェットも戸惑うばかりで、不思議と涙が零れる。 「ジェット」 ジェットの中に収まったアルベルトも深い充足感を得ていた。がっついていた先刻までの嘘のように落ち着きを取り戻せて、もう、これでジェットが自分のモノだと認識できたのか、快楽はあるけれども、穏やかな感情が四肢を支配していくのを感じる。 「っは……んん」 甘い吐息を吐き出しながら、自分の顔を隠しているジェットの腕を外すと、其処には濡れたスカイブルーがある。目尻からソファーに吸い取られる涙は痛みの涙ではないことはジェットの躯の状態から分かっている。 でも、泣いていることにアルベルトは触れずにそっと、口唇でその涙を吸い取ると、そのスカイブルーを見詰め直した。 「ジェット、これが愛し合うってことだ」 「ああ、アル……」 ほろりと新たな涙が流れる。 愛しているから、触れられるだけで感じる。愛してるから、触れられて恥ずかしい。愛しているから、アルベルトに抱かれたい。矛盾する気持ちだけれども、愛するという行為に全て含まれることなのだ。 だから、触れられただけて、言い様のない甘い痺れに躯が支配されてしまうのだ。 アルベルトを愛しているから、今までこんなこと知らなかった。 彼に抱かれるまでジェットは知らなかったのだ。躯だけ大人に成ったジェットは恋の意味すらも知らぬままであったのだけれども、今はもう知っている。愛し合うと言う意味を、いや愛する人に知らしめされたのだ。 「俺が、お前に愛し合うことを教えてやる。だから、厭でないなら、キスをしてくれ」 クールでどんな時でも、冷静なアルベルトの少し焦燥感を滲ませた声にジェットは今までにない愛しさをアルベルトに感じた。自分など、強引に抱いてしまえば良いのに、そんなこといちいち言わなくても良いのに、言ってもらえる程、大切にして貰える程の存在ではないのにとジェットは思うけれども、アルベルト程の出来た有能な男が自分にだけは、普通の男になってくれるのが嬉しい。 NOと答えるわけがない。 彼が自分の躯を望むのならば、何度でも差し出したい。もう、彼以外の手で触れられたくもない、そう、あの鋼鉄の手を持つアルベルトだけでいい。 ジェットはアルベルトの背中に腕を回して、ハンサムな彼を引き寄せて、その酷薄な笑みを湛える口唇にそっとキスをした。そして、今度は自分の意志で自分の中のアルベルトをぎゅっと締め上げて、誘うように足をアルベルトの腰に回して、そのくせに恥ずかしいと頬に朱を散らしたのであった。 そのジェットの恥じらいを含めた答えに、アルベルトは容赦なく突き上げる。ソファーの上では安定が悪い。もっと深く、深くジェットの奥まで知りたい。まだ足りないとアルベルトは思う。ジェットの脇の下に手を差し入れて、ぐいっと抱き起こすと自分の膝に抱え込んでしまった。 「っああああ………・・っんん………っああっん!」 ずるりと深く突き上げられる感覚に臨界点に近い場所に居たジェットのペニスは簡単に弾けてしまう。一緒にと思っていたアルベルトとしては残念だが、次のチャンスがあると、俯いて肩で息をするジェットの髪を優しく掻き上げて、涙の残る目元にキスを落とす。 「っあん!」 身動ぎするだけで、ジェットは甘い吐息と喘ぎを零す。一度、達したとしても体内にあるアルベルトがジェットの僅かな身動ぎや喘ぎでそれは徐々に大きさを増していっているのに感じるのだ。自分の体内で育つアルベルトにジェットは嬉しさを隠せない。 男の自分を抱きたいと、サイボーグの自分を抱くことに欲望を感じるとアルベルトの躯が告げてくれる。男は決して下半身では嘘はつけない。どんなに、清廉潔白なことを言っていても、そうされれば感じる悲しい生き物なのである。 そんな男達を見続けていたジェットは厭と言う程、知っているのだ。 だから、アルベルトが本気で自分に欲望を感じていると知れるから嬉しい。アルベルトを迎え挿れたその場所から、ぐずぐずと溶けてしまいそうになる。 「アル……っ、っあ」 名前を呼んだだけでアルベルトは更に体積を増して、苦しいまでの圧迫感が何とも言えない。もっと大きくなって自分が辛いと思える程に大きくなって、自分をめちゃくちゃにして欲しい。アルベルトに抱かれて、恥ずかしくも悶えて、彼の欲望を全て満たしてあげたい。 望むなら、何でもしてあげたくてならない。 馬鹿だと言われても、アルベルトしか愛することは出来ないとジェット思う。 「ジェット……っん」 鉄の男の息が僅かに上がり、うめくような声が僅かに漏れる。自分に感じているのだ。このまま自分を激しく貫いて、そのうめく男が達する時に漏らす、あの声を聞かせて欲しい。 いつもクールなアルベルトが自分の躯で乱れる姿が見たい。 恥ずかしい、けれども、アルベルトに求められたい。 自ら腰を揺らめかせて、ジェットはアルベルトの頭を抱き寄せた。 「アル……、を、頂戴ッ!」 苦しい息の下、ジェットはアルベルトの耳朶を食み、そう伝える。 自分の中で欲望を放って欲しい、アルベルトの放った体液を含んだアナルの感触を感じたい、その時に流れ出でるのがアルベルトのモノだと思うだけで、躯が歓喜で奮えてくる。 「ジェ……ット」 アルベルトの息使いが激しくなって、突き上げるリズムが早くなる。そのリズムに合わせてジェットはアナルを締めたり、緩めたりして時折、グラインドさせるその度にアルベルトが苦痛を感じている様な声を上げて、感じていると伝えてきてくれる。 もっと、欲しい、もっと、自分を抱いて欲望を満たすアルベルトが見たい。 「っ……・・くっ」 口唇を噛み締めるように声を上げて、アルベルトが果てた。 熱く流れる濁流の感触を敏感にジェットの内壁は感じて、逃がすまいと淫らに収縮を繰り返していた。 達した後のアルベルトの顔が見たい。自分も恥ずかしいけれども、後悔していない満足していると言う彼の顔が見たい。強引に自分に向かせると、少し照れた様に笑うアルベルトの顔がある。満足してくれたのだと知ると、それだけでジェットは嬉しくなってしまう。 「残念だな。一緒に逝きたかったのに………」 「一緒に逝くまで……、すればいいだろう。アル」 誘うようなことを言っているのにジェットの顔は真っ赤で、耳まで見事に染まっていた。けれども、瞳は真っ直ぐに自分を見詰めていた。最初に抱き締めた何処か遠慮がちで自分で良いのかとそう訴えていた気弱な部分が少しばかり薄らいだ気がする。 自分がどんなにジェットを抱きたいと願っていたか、多分、知らない。 急がなくてもいい。いつかそれをジェットに躯で伝えたいとアルベルトは思う。 「だったら」 とアルベルトが一度、放っても、硬度を保ったペニスをジェットの体内に収めたまま突き上げると、ジェットは背を逸らして、アルベルトの肩に置いた手に力を込めた。 「っああ………ッアッル」 触れ合えなかった長い時間を埋めようとでもするように、眠りに落ちてからもその手を二人は互いを決して放すことはなかった。 |
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