エイコンブ様 『100000HITおめでとう御座います!! 』
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おめでとうございます。



「いらっしゃいませ」
 ジエットは愛想良く他のホストに案内されて入って来た中年女性の客に挨拶をする。アルベルトは一応、頭を下げて挨拶をするが、顔は無表情のままだ。
「もっと、愛想良くしろよ」
「いいんだ、俺は無愛想が売りだからな」
 面白くないとの口調でアルベルトが答える。
 ここは六本木にある会員制のホスト倶楽部である。政財界のマダムや自身で成功を収めた金銭的にかなりの余裕のある女性の為の倶楽部なのだ。
 ここの女性オーナーは外国人で日本人の男と結婚し、死に別れた後にこの業界へと入った。女性が何を求めているのかを熟知していた為、店は見る間に大きくなり、10年前にこの会員制のホスト倶楽部を開店した。
 会員になれるということはステータスにもなっていて、上流階級の女性達の社交の場でもあった。もちろん、夫やパートナー抜きの女性同士気楽に会話が出来るサロンというのがこの店のコンセプトでもある。
 しかし、彼女達がぽろりと漏らす情報には、重大な物も混じっていて、それを金に替えるという不逞の輩が従業員の中に居るらしいのだ。
 ここのホスト達にはそれ相応の報酬と客から高額なチップを併せれば、最も人気のないホストですら月々新宿辺りのナンバー1ホスト程度の収入はあるのだ。その中にはもちろん、顧客に対する守秘義務というものも含まれている。
 そこで、マダムは幼馴染であるギルモア博士に相談を持ちかけたのである。コズミ邸に滞在していた時期に偶然再会して以来、二人はそれを機に親交を深め、彼女の店のトラブルを00ナンバーが解決する手助けをし、ギルモア博士は日本で暮らすに当たっての細々したことに対して彼女に助言を請うたり、援助してもらったりしている。
 情報の漏洩のカラクリを探って欲しいと要請があり、長期休暇中とアルベルトと失業中のジェットが借り出されたというわけなのである。
「確かに、彼女に世話になっているがな。こいつはないだろう」
 アルベルトは自身が着ているスーツを指差した。
 白い光沢のあるシルクで作られたセミオーダーのスーツは、アルベルトにとても似合っているが、本人は不満であった。白といえばシャツくらいなもので、汚れが目立つような白いスーツなど日常では着る機会など皆無であるからだ。
「いいじゃん」
 たまにはさと、ジェットはウィンクする。
「欲情しちまうくらい、イイ男に見えるぜ」
 とアルベルトの耳元で囁いた。
 アルベルトは口を更にへの字に曲げて、不機嫌な顔をする。
「なら、さっさと、仕事を済ませて、欲情しちまうくらいのイイ男とゆっくり楽しまないか?」
 アルベルトの提案にジェットは、むふと肯定の意味の小さな笑み
を零した。
「さあ、仕事に取り掛かろうか」
 二人はそれぞれの持ち場へと散っていった。





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