浪漫に満ちた生活



「ほら、ちゃんと咥えるんだよ」
 アンパンマンは自分の股間に顔を埋めているバイキンマンの頭を優しく撫でた。
 勃起したアンパンマンのペニスを口いっぱいに頬張ったまま、上方に向けられた線の細い眼差しには困惑が浮かんでいる。その表情にアンパンマンの男としての欲望が刺激され、更にペニスは容量を増していくのだ。
 細い肩にかかる薄いピンク色のエプロンのフリルが振動しているのは、バイキンマンの身体が覚えさせられた快楽に身体を震わせているからであった。
 生まれたままの姿を隠すのは薄いピンク色のエプロンだけなのである。
 アンパンマンはバイキンマンに、この格好をさせてみたくてたまらなかったのだ。
 けれども、恥ずかしがり屋のバイキンマンはイエスと首を縦に振らないだろうことは聞かなくともわかっていたことである。
 二人は幾多の障害を乗り越え、正義の味方と敵対する悪役であるという互いの立場も放棄して、全てを捨てる覚悟で結婚をすることにしたのである。
 ジャムおじさんのパン工場兼住宅兼研究所から徒歩10分の場所にアンパンマンは小さな家を建てた。
 そうして、二人の新婚生活は始まり、結婚してから3ヶ月という時間が過ぎようとしていた。既に婚前交渉はしていたものの、バイキンマンはセックスという行為になかなか慣れることはなく。未だにベッド以外でのセックスに関しては異を唱えるのである。
 しかし、今日は事情が違うのだ。
 夕食後、リビングのテーブルに置かれたままのオセロにアンパンマンが気付き、聞いてみると、ドキンちゃんが遊びに来ていて、彼女が忘れていったとバイキンマンは答える。
 盤の上の石の配列はどうみても白の圧勝なのである。ドキンちゃんの性格からいえば、白の石を選ぶだろうから、ボロ負けしている黒の石はバイキンマンのものということになる。
 よからぬことを思いついたアンパンマンは、バイキンマンに勝負を持ちかける。知能指数だけは高いバイキンマンだからして、複雑なゲームはアンパンマンといえども分が悪いが、こういった単純で駆け引きと運がモノをいう勝負事にはアンパンマンは滅法強かった。
 負けず嫌いのバイキンマンは例え結婚した相手であるアンパンマンであったとしても、それの根性は遺憾なく発揮し、予想通りにボロ負けをした。
 賭けをしようと言い出したのもアンパンマンであった。
 負けた方が勝った方の言うことを聞くこと。
 負けたバイキンマンに裸エプロンをおねだりしたのはアンパンマンである。最初は嫌がっていたが、勝負に負けたのだから言うと、そこは負けず嫌いの上に律儀な性格のバイキンマンは渋々とその条件を受けいれてくれて、今のこの行為に至るわけである。
 薄手の生地だけを纏ったバイキンマンの華奢な身体のあちこちに触れ、戦慄かせたという経緯ももちろん含まれている。
 しかし、バイキンマンの条件とは何だったんだろうと、ふとアンパンマンは気になった。
「ねえ、バイキンマン」
 自分のペニスに奉仕するパイキンマンの顎を捉えて上を向かせる。
 バイキンマンはアンパンマンのペニスの先端から出ている滴をペロリと舐め取ってから何だとアンパンマンに視線を合わせた。
「君は、勝負に勝ったら、僕に何をさせるつもりだったの?」
 アンパンマンの問いに今更という表情を僅かに覗かせたものの、正直にバイキンマンは答える。
「庭の草むしり」
「??」
「雨が沢山降ったから、雑草だらけなのだ」
 アンパンマンは可笑しくてつい吹いてしまった。
「笑うな」
 バイキンマンは不機嫌な声でそうアンパンマンに言う。
「ああ、ごめんよ」
 アンパンマンはこんなバイキンマンが愛しくてならない。
「そんなこと、『アンパンマン、庭の草むしりして? お願い』って言えばイイじゃないか。君に頼まれて僕が出来ることなら何でもしてあげるよ。僕の命が欲しいならあげるって言ったよね。それくらい君のことをアイシテルって……。全く、君はどうして、そんなに甘えるのが下手なんだろうね」
 アンパンマンの笑いの意味を察したバイキンマンは、顔を赤くする。アンパンマンにアイシテルとかスキとか言われるのは慣れないのだ。恥ずかしいと思えてしまうのだ。だって、バイキンマンはアンパンマンにアイシテルと一度しか言ったことはない。それもアンパンマンが聞いていたのか定かではない状況でのことだった。
「家の管理は俺様の仕事だっ!!」
 その意地っ張り具合がたまらなく可愛くて、愛しくて、アンパンマンを幸せな気持ちにしてくれる。正義の味方を気取っていた時だって、誰かをこんなに愛しいとは思わなかった。
 この世界の人々を助けるといいつつも、彼等ことを愛していたわけではない。自己を犠牲にしてまで助けたいとは思わなかったけれども、バイキンマンは違う。自分の命を投げ打ってでも彼を守りたいと願った。
「明日、草むしりをするよ」
「でも、貴様は勝負に負けたわけじゃぁ……」
 アンパンマンは椅子に座ったまま上体を屈め、自分の目の前に跪いているバイキンマンの脇の下に手を入れて膝の上に軽々と抱き上げた。
 バイキンマンは抗うが体格の差もさることながら、力でも勝るアンパンマンに勝てないとことはわかっているから、その抵抗は中途半端で終ってしまうのだ。その上、アンパンマンの身体を足で挟み込むような体勢で抱き上げられてしまった為、先刻体内に放たれた残滓がアナルからとろりと流れて出してしまう。その感触に、バイキンマンは身を竦めることしか出来ない。
 そして、そのままアンパンマンに抱き締められる。
 太腿の内側に勃起したアンパンマンが当たり、それに感じて自らのペニスもぴくりと反応してしまったことが恥ずかしくて身体に力が入らない。
 頬が熱くなり顔を上げられない。
「いいんだよ。僕が君にしてあげたいんだから……。それとも、しない方がいいのかい?」
 俯いているバイキンマンを覗き込むようにしながら頬に右手を当てて、口唇を合わせる。いつものように貪るような激しいキスではなく、重ねるだけの優しいキスを贈る。伏せられていた顔と瞳がおずおずとアンパンマンのそれに絡んだ。
「さぼったら、承知しないのだ」
「はいはい」
「はいは、一度でいいのだっ!!」
 それは、恥ずかしさを紛らわす為の台詞だということはアンパンマンが一番良く知っている。それでも、随分、自分に甘えるようになってくれたことがアンパンマンには何よりも嬉しくてならない。
「はいっ!! でもね、バイキンマンもさぼらないで、僕の相手してよ」
 そう言って堅くなっている自分のペニスわざとバイキンマンの太腿の内側に擦り付けるとバイキンマンの顔が更に真っ赤に染まる。
 そんなバイキンマンが愛しくてたまらない。
 そんな気持ちを込めて、アンパンマンはバイキンマンを優しく抱き締めた。
 





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The fanfictions are written by Kurataki Humiharu since'19/10/01