快楽に震撼する脳髄



 久しぶりなのに、久しぶりにアルベルトがNYに来てくれたのに、そりぁ、アルベルトが悪い。でも、アイシテルなんて言われるとつい怒る気が失せる自分にも問題ありなのだ。
 ダメだ。
 アルベルトにアイシテルって言われると骨まで溶けてしまいそうになってしまうのだ。
 そんなアルベルトとセックスしたいんだから仕方ない。普通に多少、SM染みているとかいつもより長く焦らされたとか、変わった体位を試したとかなら今までにも、経験あるし、ベッドの上や部屋以外でセックスしたことも何度もある。
 でもだ。
 NYの街をアルベルトに見せたかった。何処を言うわけではないが、自分が生まれて育った街の空気を味わってもらいたいとそう思ってたのに、アルベルトがNYに滞在中、ベッドの上から動けないジェットの代わりに食料品の買い出しにスーパーマーケットに行っただけなんて、情けなさ過ぎる。
 だいたい、飛行機でドイツからNYまで何時間かかると思ってるんだ。と、ジェットは少し憤慨する。こんなアホをしに、あの男はわざわざ来たかと思うと、嬉しさ反面、ばかばかしくなってしまう。でも、そんなところも好きなんだから仕方がないと、半分諦めの溜め息を零した。
 散々、何度も気を失うくらい。
 ミルクコックが空になるくらい、声が掠れて出なくなるくらいにセックスをした満足感はあるけれど、全てがアルベルト自身ではないことは腹立たしい。これがアルベルトが齎してくれたものだけなら、ジェットは満足もしたであろう。
 なのに、今回はその7割がコイツの齎したものだと思うと、そうさせたのがアルベルトであったとしても、アルベルトの自分に対する欲に不満があるのではなくて、このロボットの存在に腹が立つ。
 それに何のフォロもなく、ジェットが眠っている間に飛行機の時間だと帰ってしまったのだ。起こしてさよならの挨拶もせずにだ。眠っている自分にキスぐらいはしてくれたのだろうけれども、眠っていては覚えがない。それはそれで、自分に対する思いやりだとわかっていても、起きていな かった自分にも腹が立つし、起こさなかったアルベルトにも腹が立つ、でも、八つ当たりの相手はコレしかいないわけなのだ。

「アルのバッカー、ヤ・ロウゥーーーッ」

 思いっきりベッドの横に立っているロボットアルベルトを蹴飛ばしたが、ロボットアルベルトはやはり固かった。蹴った足からじりじりと振動が這い上がってきて、最後には突き上げまくられていた腰が悲鳴を上げ、ジェットはベッドにまた突っ伏してしまった。
「うう…いってぇーー、絶対、オマエ破棄処分にしてやっからなっ!!」
 と、物言わぬアルベルトそっくりのロボットを指差してジェットは宣言すると、口唇を尖られせたまま毛布に包まった。少しばかり覗く跳ねた赤味を帯びた金髪が彼の心境を如実に物語っていて、ここにアルベルト本人がいたらそれは嬉しげな笑みをその顔に浮かべであろうことは想像に難くはなかった。






「っ……あん、だ、っめ…ん」
 ジェットの喘ぎに混じった懇願をアルベルトは黙殺した。
 それは、若いが故に堪え性ないジェットにしてみればいつもの台詞でどうということはない。その証拠に、股間に顔を埋めているアルベルトの髪に指を掴んでいても強引に引き剥がすどころか自ら股間にアルベルトの頭を押し付けようとしている。
「っあ……。ソコッ……っんんん、っあ」
 甘い声が上がり、白い喉を仰け反らせる。
「どうだ。こいつのジョイスティクの味は?」
 口に含んでいたジェットのペニスを離して、舌でその先端を突付くようにしながら問うてみると、言葉ではなく喘ぎ声だけが返事となって返ってくる。
 そりぁ、もう自信作であるのだ。
 開発3ヶ月かけただけはある。
 BG団時代で人脈を築いたのは何もギルモア博士だけではないのだ。アルベルトもそれなりに人脈なるものを築いていたのだ。サイボーグ研究所はそれは、それはもう胡散臭いの一言に尽きる。マッドな分類に入れられたとしても若き頃のギルモア博士はかなりまっとうな部類に入れてしまえるほどに胡散臭い研究者で満ち溢れていた。
 ナニの研究をしとんじゃいと突っ込みを入れたくなるような連中が有象無象していたということ言うまでもなく。
 どう言うわけかそういう胡散臭い研究者にアルベルトはもてた。恐ろしいほどにもてていたのだ。別に危害を加えるわけではなく自分の研究の成果をひたすらしゃべり続けるのだ。要するに頷いてくれれば良いだけで、ジェットは男ばかり研究所に於いてはその容姿からか、いつも尻を狙われていてその手は話題には至極敏感になっていて唯一安らげるのがフランソワーズだけでそれはもうべったりだったし、フランソワーズは腐っても女性だ。
 他の科学者連中はもちろんその手の話題には疎く、お話にもならない。
 というわけで、その手の話が出来るのがアルベルトしかいないという悲惨な状況であったのだ。
 アルベルトも普通の成年男子でその手の話題が決して嫌いなわけではない。
 まあ、強いて言えば好きな方に入るであろう。
 それが故に、アルベルトの性的な知識はどういうわけだが歪んだ方向で豊富になってしまったのである。そんな連中は、その手の玩具の開発に成功して、島を出て行った。金になると踏んだBG団の経済部門担当が彼らを引き抜いて新しいセクションを立ち上げたのだ。
 表向きはちゃんとしたオトナの玩具専用メーカーであるが、少なくとも最先端技術がゴロゴロしている研究所ではお荷物的な彼らも、世間に出て見れば優秀な科学者に違いはなかったが、普通の研究が出来るならBG団のお誘いにホイホイ付いていったりはしないはずなのだ。
 で、そういう人たちはどういうわけだが、律儀な人が多い。
 自分にそっくりのロボットを見た瞬間、その昔を即座に思い出してしまった。自分をモデルにして、女性用ダッチワイフとホモセクシュアル用ダッチワイフを開発すると言って身体中のサイズはもちろんナニのサイズまで測られた経歴のあるアルベルトは、早速、彼らに連絡を取ると明るく『バレちゃった』と答えが返って来たのである。
 はっきり言って、彼らを引き抜いたBG団の経済部門の連中は軍事部門を含むサイボーグ研究に関して抹殺してしまいたいのだが、その科学力まで切ってしまうのは欲しいとばかりに二の足を踏んでいる状態で決して、BG団は二枚岩ではないのだ。
 だからして、アルベルトと彼らとの交友が再び、始まってもサイボーグ研究所の面々は気付かずにいたというわけであるし、なかなかサイボーグたちの居場所を掴めないのは、情報戦には長けた経済部門の連中が嫌がらせで故意に隠しているという噂もなきにしもあらずなのである。
 でもって、新しいダッチワイフの開発に協力する見返りとしてこの自分そっくりのロボットにジョイスティクをつけさせたのである。もろん、サイズはアルベルトのナニと同じサイズである。しかも、動く仕組みになっていて、強弱は30段階、振動のリズムは30種類からセレクト出来る代物である。
 それがジェットのアナルに深々と突き刺さっているのだ。
 ベッドの端に腰掛けたロボットの膝の上に座らされて、床に跪いたアルベルトにペニスをねっとりと愛撫されれば、ジェットと言えどもたまらないはずである。
 元々、快楽には弱く出来ているジェットはアルベルトが性的な意味を込めて、頬を撫でるだけで反応を返してくるぐらいなのだ。それ程に、ジェットの躯はアルベルトの齎す快楽に従順に出来ている。
「気持ち…、いい、だろう?」
 ペニスの根元を左手で握ったまま、少し腰を浮かせて耳元に囁きを入れると、ジェットの腕が縋るようにアルベルトの肩に伸ばされる。
「イイ…、でも、クセになったらどうしよう?あんたお払い箱かもよ」
 乱れる息の下でそう返してくる辺りがジェットらしすぎて、アルベルトは楽しくなってしまう。ジェットとのセックスは楽しくて、スリリングで、麻薬みたいなもんだ。躯がぼろぼろになるまで止められない。
 ジェットに負担がかかるとわかっていても、一回じゃ終わらない、いや終わらせられない。会う度に、何度もシーツがどろどろになるまで抱き合うのが二人の定例行事になりつつある。
 躯で離れていた時間を埋めてその存在を確かめてから、ようやく近況報告や普通の恋人のような時間を過ごすのだ。
 それは、生死を分かつような経験を積み重ねていて、互いにいつ死んでもおかしくない状況の中にいたから、生きているのか確かめないといられない悪癖なのかと思うが、それはそれで恋人を腕に抱けるのだから、深くは考えないようにアルベルトはしている。
 最近、ジェットを抱けるのなら機械の躯も悪くないと思うこともあるのだし、アナログな部分を残しているからこそ、人としてまだいられるそんな気がアルベルトにはしているのだ。
「そんな、へらず口、叩けないようにしてやる」
 アルベルトがそう言った瞬間、ジェットの背が反り返り、白い喉元があらわになる。軽く歯を立てて、細い白い首筋に舌をねっとりと這わせてやったのだ。その間にも左手でジェットのペニスの根元を達することが出来ないようにきゅっと抑えて、鋼鉄の手で先端を舐るとジェットの細身なペニスがひくつき、いやらしいまでの粘りのある液体を更に先端部分から溢れさせる。
 もう、ジェットも限界に来ていて達したいのはわかっているが、敢えて左手を外しはしない。
 ジェットの強気な発言が本心でないと知っているけれども、そんな憎まれ口を叩くジェットの言葉尻を取って虐めるのが楽しいのだ。男は可愛い子程虐めたいのだから、諦めてもらうしかない。
 可愛い態度で自分を誘惑するジェットが悪いのだと、アルベルトはそう決めてつけることにしている。
「っあああ………、ぁ、ぁああ、ぁん、ふん」
 途切れ途切れの荒い吐息がアルベルトの首筋にも掛かってくる。元から、高い体温のジェットの躯はセックス時には更に熱くなっていく。白い肌がほんわりとピンク色に染まるその彩はアルベルトを誘い入れるそのアナルの入り口と似ていて妙にエロテックである。
 既にジェットの限界を超えた、セックスにじんわりと快楽の汗ではない汗が滲み始めていた。そろそろ許してやろうと、赤く血の色に染まった口唇にキスを落とすと、潤んだ瞳がアルベルトに当てられた。
 苦しげな吐息の下で口唇が『イカセテ』とそう綴られる。可愛らしく哀願をするジェットに優しく微笑んで応えてやると、膝を落として、その細身のペニスを口に含んで舌で優しく愛撫を施してやった。
 恥じ入るように閉じようと、僅かに動かされた足はアルベルトの頭に阻まれて閉じることも出来ずにいる。ペニスを口全体で含んでやり、根元を押さえていた手を外すとそれはあっけなく達してしまった。
「っあ…、イヤ…………、っう、ぁぁぁああん!!」
 濃い恋人の吐き出した液体は、前にドイツで逢瀬を重ねてから一度も自分ですらしていないことを証明していて、至極甘くアルベルトには感じられた。いきがった外見とは全く違って、貞操観念の固い恋人のいじらしさが伝わって来て、つい夜の営みに励んでしまうアルベルトがいる。
 今日は協力な助っ人もいることだし、さんざっぱら啼かせて、でも、自分が帰った後で自分を恋しがるようにしてやりたいとそんな意地悪なことを考えているなど、達したばかりで息を必死に整えているジェットには予想もつきはしなかったのである。






「バカヤロウ〜っ!」
 ジェットは荒い息がまだ収まっていないのに、肩を上下に動かしながらまだロボットのジョイスティクを突っ込まれたままアルベルトに対して抗議を行おうとする。未だ、この憎たらしい男は服の一つも乱していないのだ。
 自分だけ裸に剥かれてジェットとしては面白くはない。
「ナニ、考えてんだ…あんたは」
「ジェットが寂しくないようにな。躯が夜泣きするだろう」
 確かに、夜泣きはする。アルベルトの濃厚なセックスを思い出して躯が疼くことなどしょっちゅうあるけれども、まだ、次回会うまでのお楽しみとして取っておける余裕だけは失っていないつもりだ。
 そういうインターバルがあるからこそ、会うと萌えるのだとジェットはそう思っている。そもそも、アルベルトは見た目こそは固そうだけが、存外にセックスが好きなようである。でなければ、30歳にもなろう男が一晩に5回が最低ラインということは有り得ない。
 よっぽど絶倫だったのだと窺わせる。
 もっと若い頃はどうしていのだろうと、つい過去の恋人たちに対して同情的になってしまうジェットがいるのだが、実はサイボーグになってから絶倫になったのであって、生身の頃は普通の男、いや、正確に言うと絶倫になったのはジェットと関係を結んでからである。
 ジェットが相手だから萌えるし、興奮するし、絶倫になってしまうのだ。
 アルベルトは何度もジェットにそう言っているのに、ジェットは昔からだとの誤解を解かずに、今に至っているのだ。
「しねぇ〜っちゅうの。だいたい…、あんたわ……っ、あん」
 ロボットを蹴倒して、アルベルトに掴みかかろうとした瞬間、背後のロボットからがっちりとジェットの躯をホールドした。突っ込まれたままのジョイステックが緩やかに振動をし、敏感なジェットの内壁はそれを簡単に拾ってしまう、
 さっきまでのセックスの余韻は抜けていなくて膝が笑って思うように躯を動かせないでいた。
「ちょ…、離せっ!」
 アルベルトはじたばたとしているジェットを見て、ニヤリと笑う。
「笑ってないで、助けろって……」
「ちゃんと、使い方覚えておけよ」
 そんな台詞を言うアルベルトをジェットはきっと睨みつける。それでも、青い瞳は快楽の残像で潤んでいて、説得力なさすぎであった。白い肌が蒸気していて、股間のペニスは既に半勃ちになっている。アルベルトの唾液と自分で流した愛液で髪と同じ赤味を帯びた恥毛がテラテラとライトを反射して輝いていて、その狭間から頭を覗かせるペニスはアルベルトに愛して欲しいとばかり震えていた。
「っあああ、あ、あ…、バッカ、野郎」
 アルベルトは楽しそうにそんな姿を見ていた。今度はどうしてジェットを虐めてやろうかと、思案をしているのがわかる表情だけにジェットは悔しくてならない。どんな時でも負けず嫌いの男の子なのである。
「ほう、回転モードに入ったか?」
 そう、ロボットのジョイステックは回転をするのだ。
 高速から低速までジェットの声の調子で体温や心拍の状況からジェットの躯の状態を計測して、入力されたデータに従ってジェットを高める為のシステムまでついている優れものなのである。
「グリグリ回転させんじゃねぇーーーーーっ!」
 ジェットの叫びは喧騒の激しいNYの夜空に吸い込まれていってしまった。






 こうして、アルベルトは至極充実したNYでの、三日間を過ごすと機上の人となったのである。
 ジェットの『馬鹿野郎』的叫びが聞こえたかどうかはわからないが、その顔は惚気で蕩けそうな恋人に骨抜きな見るからに恋現を抜かす普通の男の顔があったことは言うまでもないであろう。
 そして、次のドイツでの逢瀬の時には自前のジョイステックで啼かせてやるとの決意をしていたことはもう、当たり前過ぎて、説明の必要もないであろうということであった。





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