彼と彼女の彼の事情
「オレに恥かかせる気か」 強気のジェットはバスローブだけを羽織ったままの格好で、腕を組んだ。大きくふんぞり返っている上に、バスローブの前がくつろげ掛かっている状態では、眼の毒だとアルベルトは視線のやり場を必死で探すが、テレビ画面の中ではことの真っ最中で女の喘ぎ声が盛大に聞こえている状態である。 だったら、まだ、テレビの画面から流れているアダルトビデオに興奮していると思われた方がマシと言わんばかりに、アルベルトはちらりと視線をそちらに流した。 その瞬間、ジェットの視線が剣呑になる。 主電源のスイッチでテレビ画面をオフにすると、所在なげにベッドの端に腰掛けている年上の恋人の目の前まで大股で歩いてくる。 丈の短いバスローブからは、そうでなくとも長身のジェットの生足が見え隠れする。 腹で呼吸を始めないと、脳みそが沸騰して挙句に、野獣に変身してしまいそうな自分が嫌ではないが、事情が事情なだけに躊躇いがあるのだ。 腕を組み、すらりと長く伸びた左足をダンとベッドの上に乗せると、アルベルトの重量級の躯がベッドの端で僅かに上下した。 「許せねぇ。オレにその気になんないで、どうして、AV女優に反応するんだってぇの」 正直言って、AV女優に反応したのではない。 バスローブ姿のジェットに反応したのだ。でも、いつものジェットなら遠慮なく美味しく頂いて、今頃は1ラウンドを済ませて、2ラウンド目に突入している頃合だ。 だが、しかし、とアルベルトは困惑した眼でジェットを見上げた。 青い目がキラキラと輝き、頬はシャワーと怒りのせいでピンク色に染まっている。目元に残るそばかすの跡がほんのりと浮かび上がり、口唇を時折、舌が舐める仕草から視線が離せない。 「ラブホにまで入っといて、何だってのその態度、することしねえんなら、帰るっ!!」 そう叫んで、躯を反転させる。アルベルトが何かを言う前に纏っていたバスローブを脱いで、煮え切らない男の頭に被せるように投げつけた。腹が立って仕方がない。どうなってしまったとしても、自分はアルベルトが好きだし、愛している。 彼が愛してくれるのならば一生このままでも構わないとすら思っているのに、いつもとちょっと外見が違うだけで躊躇するアルベルトに腹が立った。 自分が男だから、子供が出来ないから、だから抱いたのかと心ない言葉が出てきそうになる。そんな自分がイヤで脱衣所の籠の中に脱ぎ捨てた洋服を目指して、足を踏み出した瞬間、背後から抱き締められた。 「ジェット」 困ったような男の声。 年上なのに、何でも知っている大人なのに、時折、自分を愛していると好きだとそう告げる時の彼は存外に幼く見えて可愛らしいとすら思えてしまう。 それだけで不思議と怒りが冷めていく。 帰りたいわけでもない。 一緒に居たい。 いつもみたいに抱いて欲しい。 「アル」 背後からの拘束を緩めると、アルベルトに向き直った。下から覗き込むようにすると年上の恋人の青白い頬の色がわずかに変わった。胸元に当てられた視線がすぐに離れていくのを見て自分が何も着ていないことに気付くが、どうということはない。 いつも、裸で全てを晒して抱き合っているのに今更ではないのかとジェットは思っていた。 「何か…」 「いらねぇ」 バスローブを取りにベッドへと躯を向けた男の腕を握る。 「いらねぇ。これからあんたが抱いてくれるんだろ?」 真っ直ぐにアルベルトのブルーグレーの瞳を見詰める。いつもと変わらない北海の凍えた海の彩りをした瞳、大好きな色だ。見ているだけで幸せになれる気がする瞳だった。困惑していると感情を伝えてくるから、更に愛しさが増す。 ずっと年下の自分に翻弄されて、プライドの高い男が全てを捨てて自分を愛してくれている。それがジェットには嬉しくてたまらないし、それ以外は何もいらない。 「でも」 「女になったオレは嫌?男だったら妊娠しないから後腐れない?」 笑顔でそう言うと、アルベルトは哀しそうな顔をする。そうではないことをジェット自身が一番良く知っていて、我侭を言っている。 突然、オンナになってしまった。 そのことに関しては、驚いたがまあずっとというわけではないし、楽しむ余裕がジェットにはあったのだが、それ以来、アルベルトの態度がよそよそしくなった。女の子になったのだから、やってみたいことは色々とあったのに、アルベルトは逃げてばかりで自分を見てくれようともしなくなったし、前のようにじゃれ合ったりしてくれなくなった。 ソファーに座っていても必ず人が一人入るのがやっとという距離は空ける。前はそんなことはなかったのに、とジェットはそれが歯痒かった。 「違う…」 「だったら、抱いてよ。愛してよ。オレ、女になってあんたとしたいことがあったんだぜ」 何だと問う視線にジェットはそんなことも分からないのか、馬鹿だなとの愛情を込めて優しく笑った。 「堂々と腕を組んで、手を繋いで町をデートすることと。あんたとセックスすること。してくんないなら、無理に襲うぞ」 女性になって少し背の低くなったジェットは見上げるようにアルベルトを見詰める。腕の中の裸体には何の嘘もないとそう書かれていた。 「ジェット」 「愛して、抱いてくれよ。あんたしか知らないオレをあんたに知ってて欲しい」 アルベルトはそんなジェットの殺し文句に完全にノックアウトされていた。そうでなくとも女の子になってしまったジェットの可愛さにはどうも太刀打ちできなかった。仕草はジェットのままであるから、女の子の部分が更に際立つのである。 女性に言い寄られても、あからさまにベッドに誘われても、AVを見てもはっきり言って全く反応できなかった。ジェットが寛げたシャツの襟首から覗く白い胸元やジーンズに包まれた細い腰を見た方が余程、ぞくりとしてしまう。 なのに、ジェットだと思うだけで、女の子になったジェットにすら反応してしまっている。触れ合ったら、止まらない自分がいることを自覚してしまっていたから、怖くて触れられなかったのだ。 男としては自分が始めての男ではなかった。でも、女の子のジェットは処女なのだ。別に処女性に拘ることはないが、そのナニというか更に華奢になってしまった躯を傷つけてしまわないかとか色々と心配になってしまうのだ。 「後悔しないか」 「あんたに抱かれない方が、オレは後悔するよ」 と、ジェットははんなりと笑って愛しい男の分厚く固い背中に腕を回した。 「フラン、どう?」 ジェットはフランソワーズに薦められた洋服を着ると、フランソワーズの前に立った。 フランソワーズのちらりと流された視線と、ニコリとの笑いが返ってくるのは合格というサインであった。 「でも、随分、立ち直り早いわよね」 と自分より僅かに高い程度に縮んだジェットの頬をツンツンと突付いてみせる。ジェットはイヤイヤと首を横に振りながらも逃げようとはしない。一頻りそんな攻防を繰り返した二人は、最後にきゃらきゃらと女の子特有の甲高い笑い声を零して、ちょっとした攻守攻防を終える。 「アルもメロメロかな?でも、あのワンピースも捨てがたいかな…」 とベッドの上に置かれているベージュのワンピースを指差した。確かに、あのお堅い男が好みそうなデザインではあるが、ジェットの若々しいキュートさを出すにはこちらが絶対にイイとフランソワーズが押し切ったのだ。 赤を貴重にしたチェックのミニのプリーツスカートに同じ柄のブーツカバー、その下には短い足首までしかないブーツを履かせる。インナーには大きく襟ぐりが空き、大胆に胸元と肩を露出させるデザインのニット。コートは襟と袖に白いファーのついたベージュの皮のショートコート。薄いナチュラルなメイクを施して、何処から見ても可愛らしい10代後半の女の子の出来上がりだ。 すらりと伸びた足に、華奢な体型は一見モデルのようでもある。 ただ、惜しいのは、胸があまりないということだ。連れ立って女性モノの下着を購入しに行った時に測ったらBカップであった。 「でも、よくアルベルトがデートをしてくれるって…」 「あん?ああ、だったら独りで出掛けてやるって言ったら、簡単だったよ。フラン」 とジェットは明日のデートの為の衣装を脱ぎながら、笑った。 だって、アルってばああ見えても独占欲強いから、オレが他の男に声かけられるのがイヤなのさと、愛されてますと言外に含めてフランソワーズに惚気る。 今朝、今日の洋服だとフランソワーズが選んでくれた黄色にニットの丈の短いワンピースに着替える。それは細身のジェットによく似合っていた。更にフランソワーズは少しデザインの異なった若草色のニットワンピースを着ているから、姉妹がおそろいを着ているようで、二人で並んで立つと花が咲いたようである。 躯のラインが綺麗に出るニットを着たジェットはとても可愛らしい。素足にファーのついたミュールを引っ掛けると清楚なオトナの女性の魅力を湛えたフランソワーズとは違って、まだ少女の面影を残した先刻とは少し違ったキャンディーのようにスィートな雰囲気の女の子が出来上がる。 「どう、可愛い?」 ジェットが女の子らしい格好をするとアルベルトがぎこちなくなり、少し接近しただけであたふたと始める。スマートな男が途端に三枚目になるのが楽しくて、ジェットはフランソワーズに誘われるままにお洒落をすることに余念がなかった。 それに自分が女の子の格好をするとフランソワーズが楽しそうに笑ってくれる。やはり、女の子の話題は女の子にしか分からない。最も、ジェットだとて女の子の話題には女の子なってしまったからと言って簡単についていけるわけではないが、洋服を選んでくれたり、一緒に買い物に行ったりする時には凄く嬉しそうに笑ってくれる。 フランソワーズが喜んでくれるのが、純粋にジェットも嬉しいのだ。だから、オンナになってしまった以上、女の子の格好をすることに戸惑いはなかった。 「とっても、可愛いわよ」 フランソワーズに教えられた通りに、鏡に向かってルージュを引くジェットに笑いを隠せないでいる。本当に可愛らしい、男の子のジェットも可愛いが、女の子のジェットも可愛い。こんなに可愛いんなら、張大人に頼んで、もうちょっと悪魔の実の親戚やらを貰ってきてもらおうかしら、などとフランソワーズは本気で考えていた。 そう、そもそも、ジェットが女の子になってしまったのは、張大人が貰ってきた漢方にあったのだ。大人のコック友達が、元気がない友達に食べさせると元気になるとその実をくれたのだそうだ。悪魔の実の親戚という変わった名前で、ここのところ元気のないジェットにと食べさせたところ翌朝にはジェットは女の子になっていた。 慌てて友人の金髪のコックを捕まえて問い質したところ、あっさりとそれを認めて、元気になったっしょと不敵に煙草を加えたまま笑って寄越したのだ。さすが大人と対等に付き合えるだけあって、そのコックも一筋縄でいかない男であった。 更に、2週間くらいで戻るからと言うが、サイボーグの躯にどのような変化が現れるかがわからないのが困ったことである。 でも、当人は女の子の躯に満足しているようで、女の子になってしまった当初数時間は混乱していたが、その日の午後には自らフランソワーズを急かして女の子の洋服を買いに走ったくらいであった。逞しいと言えば、逞しく、反対に脱力したのは男連中、特に恋人のアルベルトであったのだ。 「ホント、ジェット。可愛いわ」 とフランソワーズはにこりと笑った。どうせなら、このまま戻らなくていいのにとすら考えてしまうフランソワーズであった。 「明日のデート楽しんでらっしゃいね」 「うん」 明日の初デートに胸を躍らせる妹と優しく見守る姉の図がそこにはあったのである。 目を閉じたジェットのルージュを引いた口唇に、アルベルトの口唇が自然と引き寄せられる。いつもより視線が下にある華奢な躯。抱き合うとぴたりと胸が合わさり、股間の膨らみが互いに感じられたが、今日のジェットは違う。 胸筋の下辺りに大きくはないが柔らかな乳房があり、合わせた口唇はいつもより柔らかかった。 啄ばむような口付けを数度繰り返すと、ジェットが顔を上げて頬を染めながらもしっかりとアルベルトの目を見詰めた。いつもと変わらぬ青い瞳の彩が性別が変わったとしても、それがジェットであることを告げていた。 濡れた瞳の艶やかさだけは隠しようもない。 皇かな皮膚の感触も何ら、変わってはいないのだ。 そうだ。 アルベルトが反応するのは性別ではなくジェットという人の魂を内包した肉体であった。ジェットの魂が宿っていればアルベルトはそれで構わないと思う。そうでありさえすれば、男であれ女であれ自分はジェットを肉体的にも愛することが出来る。それは、ジェットがアクシデントにより女の子になってしまってから気付いたことであった。 その躯を抱き締めてみれば、自分が危惧していたことなど全て何処かに行ってしまいそうになるのだ。もう、止めろと言われても止められない自分がそこにいるのをアルベルトは自覚していた。 「後悔はしないな」 往生際が悪いと思いつつも、それはそれだけ自分を大切に思ってくれているからなのだということをジェットは知っているから嬉しく思える。男であっても、女であったとしてもアルベルトに愛されるなら、そんなこと些細な問題になってしまうのだ。 あの鋼鉄の手で触れられると思うだけで、その快楽を脳髄に刻まれたジェットの神経は、それに向けて高揚を始める。 シャワーでいくら流しても、これからアルベルトに抱かれるのだと思うだけで、男の自分は持たなかったその場所から蜜が滴り出て、幾度もシャワーで流したぐらいだったのだ。 「なあ」 その鋼鉄の手を取ると、まだ困惑している男の分厚に胸に顔を預けて濡れそぼる股間へと導いた。逃げる男の手をそのまま割れ目へと触れさせると、ぬちゃりとした感触を男が感じ取ったのか驚いたように躯がぴくりと動いた。 それは、どれ程にジェットが自分を待ち侘びていたのかという証であった。それだけで、アルベルトの下腹部はかっと火が点いたように熱くなり、留めようとしていたベッドへの誘う台詞が簡単に口を突いて出る。 「ベッドに行こう」 そう耳元で囁くと、ジェットはこくんと表情を長めの前髪で隠したまま頷いた。 平気で大胆なプレイを要求したり、これみよがしに誘ったりするくせに、時折、どうしてこんなことが恥ずかしいのだと聞きたくなるようなことに、恥じらいを見せるジェットがアルベルトにはとても可愛らしく見えてしまうのだ。 そんなジェットはアルベルトの有り余る保護欲をそそってくれる。 女として男に抱かれるのはもちろん初めてのことだ。同性同士のセックスとは違うのだ。少なくとも、女を抱いた回数はアルベルトの方がが多いであろうし、女を悦ばせるテクニックも知っているであろう。 伊達に年をとってはいないのだ。 ジェットの躯を抱き込むようにして、ベッドに倒れこんだアルベルトは自分の体重が極力掛からないように、細心の注意を払ってジェットの裸体に伸し掛かった。 ちゃんと愛してやりたい。 今まで関係したどんな女達よりも丁寧に、昔は処女など面倒だと思っていたけれども、今は違う。もちろんジェットの処女性に今までは拘ってはいなかったけれども、今、ここに女の子になって自分を愛しているジェットが居るとなれば別である。 どんな形だとしても自分の存在を刻み込みたい。 2週間程で元のジェットに戻ったとしても、ジェットの全てを手に入れたいのだ。独占欲の塊だが、ジェットに関しては理性が働かないのだ。誰とも知らぬ男に偶然道を聞かれたりするのを見るだけで、腹が立ってしまうような嫉妬に狂う普通の男なのだから、とアルベルトは心でそう思った。 頬から首筋、そして乳房に確認するように鋼鉄の手を這わせるとジェットの躯がぴくんといつもと同じように反応を返してくる。こうして触れられるだけで感じるのだ、とジェットの躯は伝えてくるのだ。それが嬉しくってたまらない。 軽く摘むと少しだけ尖ったピンク色の乳首が、盛り上がる。 子供のようにむしゃぶりつくと、甘い声を上げて、アルベルトの頭を抱いた。 歯を立て、舌で転がし、膨らみのある乳房全体を舌の先で円を描くようして、もう一方の手で、もう一つの乳房を痛いくらいに揉んでやると、ピンク色の乳首がつんと固く立ってきた。 感じているという証拠だ。 男のジェットも乳首が弱かったが、女性になって拍車がかかったようである。そっと下腹部に手を伸ばせば、内股はもうジェット自身の蜜で濡れて、髪と同じ色の恥毛は蜜に塗れていた。 左の手を潜らせて、割れ目を広げるようにすると、腰が浮き、一際高い声が上がる。 「っああん」 蜜の滴る壷の口の周辺を何度も指で辿ると、しとどに蜜は溢れてやがてはシーツにまで染みを作る。ジェットの下半身はヌメル自らの蜜で濡れ、例えようもなくアルベルトの男の部分を擽ってくれていた。 ジェットの手が自分ばかりは嫌とばかりに、アルベルトの自身を探して彷徨うのを圧倒的な力で押さえつければ、拗ねたような色合いの青い瞳で自分の乳首に吸い付いているアルベルトを睨みつける。 アルベルトはそれに気付いていて触らせない。 こんなジェットに触れられたら、ジェットの処女を頂く前に自分が達してしまいそうだったのだ。一度ぐらいでは、どうということはないけれども、今まで溜め込んでいた全てをジェットの体内に注ぎ込みたい。 想いの全てを自らの熱く滾るモノに託してみたかった。 「今夜は、黙って抱かれてろ」 耳朶を食みながら、耳元で囁くだけでジェットは気の毒なまでに白い肌を朱で染め上げ、熱い吐息をパールピンクのルージュを引いた口唇から、答えのように吐き出した。 「っう、……っあっ」 「いい子だ」 アルベルトの左手はジェットのぷくりと膨らんできた蜜坪の口の傍にある小さな突起に触れる。 「っあ、イャ……。っああん。っはあんぁぁああ」 ジェットの喘ぎが激しくなる。 嫌だと、言ってはいるが更に流れ出す蜜がそうではないと告げている。女性として感じる快楽と、男性として感じる快楽は決して同じではない。その違いに初めて気付かされてジェットは戸惑っているのだろう。女性が陰部に触れられれば、どう感じるかと男の身としては想像もつきはしない。 想像以上の快楽にジェットは、怖くなってしまったのだ。 指の腹でゆっくりと優しく撫でてやると、閉じようとしていた足がゆっくりと開き、固く閉じていたアルベルトを受け入れるであろう場所が綻んできた。そのまま小さな愛らしい肉片を宥めるように撫でながら、中指を少しずつその場所に埋めていく。 触感などないはずの手がジェットの内壁の動きまで伝えてくるような感覚に、アルベルトは酩酊感を覚える。寒暖など分からぬ手が、その場所はとても熱いのだとアルベルトの脳に伝えて寄越すのだ。 全てが自分のモノだと思うだけで、触れられてもいない牡がギンギンに勃ち上がってくる。 もうたまらなかった。 一刻も早く押し入って、この無垢な躯を自分の色に染め上げたかった。誰にも、心も躯も全てを渡したくはないと強く願う。 「ジェット」 それでもなけなしの理性を総動員して耳元に囁きを注ぎいれると、ジェットは快楽の涙で潤んだ視界をアルベルトに当てる。 「オマエの全てが欲しい」 「っん……、っはんぁあん」 その言葉にジェットの躯を電流がコンマの速さでは駆け抜ける。 初めて抱かれた時のような、愛していると初めて言ってもらった時のようなあの時の躯がいや、心が痺れる感覚に、歓喜の炎に全ての神経が焼き切られる錯覚に。僅かに微笑むことでしか伝えられないくらいに自分はこの男に愛されることの悦びに支配されているのだ。 「ジェット」 抱き締める。 互いの腕が愛しくてたまらない。 互いの存在が欲しくて、欲しくて、それしか思考が出来なくなる。 もうすぐ自分を支配する人の背中に手を回しながら、自分を受け入れてくれる人の躯に触れながら、互いがその至福に存在の全てを浸したのである。 |
The fanfictions are written by Urara since'02/11/21