サンタクロースとトナカイ2
「こっちだ」 トナカイが連れて行かれたのは寝室であった。 もちろん眠る為なのだが、サンタ村にはベッドのサイズはダブル以上のものしか存在してはない。サンタクロースとトナカイは一心同体なのだから、何処に行くのも一緒だし、眠るのも一緒なのである。従って、サンタクロースの村にはサンタクロースとトナカイ用のダブルベッドしか存在しないというわけなのである。 今夜から、広いベッドで独り眠らなくとも温かなトナカイがいると思うだけで、若いサンタクロースは嬉しくなるのだ。 「えっ…あのっ…」 今まで、サンタクロースの家の中を遠慮がちに見ながら、喜んでサンタクロースの作った食事をペロリと平らげたトナカイも、ちょっと困った顔をしている。 「オレ、ソファーで寝るっ!!」 「そんなわけにはいかんだろう? サンタクロースとトナカイは一緒に眠る習慣だろう。それに、オマエはもう俺のトナカイなんだから、ソファーでは寝かせられない。さあ、今夜は早く寝て、明日、オマエの身の回りのものを揃えに買い物に行こう」 とサンタクロースは今まで、苦味潰したような顔をしていたのがウソのように楽しげに笑っている。いつも、苦悩していた若いサンタクロースの笑顔が見られて嬉しいトナカイなのだが、何せ、恥ずかしい。それに、トナカイの躯には見られたくはない無数の傷があった。 サンタクロースの数に対してトナカイの数は多い。 一生自分のサンタクロースに巡り合えないトナカイも多い、そういう連中は徒党を組み悪さを働いていたり、自分より立場の弱いトナカイに危害を加えていたりした。特にこのトナカイは変わった容貌であった為、目をつけられていて、トナカイの毛皮の下には幾つもの傷があった。 それをサンタクロースには見られたくはない。 ベッドに入るにはトナカイの毛皮を脱がなくてはならないのだ。 でも、トナカイはサンタクロースの意向に逆らえるようにはなっていないのだ、サンタクロースが喜ぶことに、喜びを感じる。またサンタクロースは無条件でトナカイを守り愛することに喜びを感じるのだ。 「恥ずかしいから、明かりを消してくれよ」 としかトナカイには言えない。 でも、サンタクロースは知っていた。徒党を組乱暴狼藉を働くトナカイ達についてはサンタクロース達も頭を悩ませている問題でもあるのだ。サンタクロースに目をつけられたトナカイはそうでないトナカイのよって怪我をさせられたりするケースも、近年では少なくはない。 外見の変わったトナカイがその標的からの免れるとは思えない。 だから、知らぬ振りをして灯りを落とすと、毛皮を脱ぐ音がして、するりと冷たい風と一緒に細い躯が潜り込んできた。 「もっと…こっちに」 とサンタクロースはその腕にトナカイを抱き締めた。毛皮は纏っていないが、トナカイの躯は温かい。凍えていた心が解かされる感触を覚える。 「これからは、ずっと一緒だ」 サンタクロースはそう囁くと、トナカイはサンタクロースの腕の中で小さく頷いた。 そして、ハイスピードが売り物のトナカイと正確無比な配達能力を携えたサンタクロースの無敵なコンビはいや、カップルは結成されたのである。それは、サンタクロースに村に様々な意味で伝説を残すカップルとなるのであった。 |
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