現物支給



 この年末だってぇのに、ついていない。
 突然、呼び出されたかと思えば、タンカーを見張ってろと言い出す始末だ。しかも、相棒は年末年始を一緒に過ごすはずの相手だとくれば、もう、これは最初から確信犯的なやつの犯行にちがいないと思うわけだ。
 別段、見張ってること自体に問題があるわけじゃないが、タンカーの停泊してる場所が悪い。
 一番見晴らしが良い場所ってのが公園だったりするのだ。
 昼間にぼんやりと海を眺める外国人というなら、まだ、笑って見逃してくれるが、夜中に双眼鏡を覗く外国人は怪しい以外の何モンでもない。
 何せ、ここは日本だ。
 ヨーロッパや、アメリカとは違う。
 日本では、外国人は目立つのである。
 で、思いついたのがこの手段だ。
 近くのコンビニに買出しに行っていた相棒が戻ってくるなり、オレは膝の上に相棒を乗せた。
 そのままぎゅっと抱き締めると、離してくれと恥ずかしそうな声を上げる。
「カモフラージュだ。恋人同士ならあやしまれねぇ。どうせ、夜の公園なんざ恋人しかいなくなるんだ。だから、俺達もそうした方があやしまれねぇぜ」
 だいたいジェットは俺の言うことに比較的従順である。
「でも……、オレ達男同士だし……」
「構わねぇよ。そういう連中もいるさ」
 と俺は強引にジェットのコートの裾から手を差し入れるとスラックスの上からジェットのペニスを撫でてやった。
「っん」
 撫で回しながら、首筋に口唇を当てるとぴくりと痩躯が膝の上で跳ねる。軽量化されているジェットの躯は重量級の俺に比べれば軽いことこの上なく、跳ねたぐいじゃぁ、どうってことのない重さだ。
「でも、ダメッ!!」
 ジェットはそれでも任務を遂行しようとジタバタしている辺りが可愛い。しかも本気で嫌がっているわけじゃないのだ。第一、ジェットは俺のセックスへのお誘いを断ったためしはない。
 何せ、俺はそれくらいジェットに自惚れじゃなく惚れられているってこった。
「本番はしねぇよ。後からゆっくり頂きたいからな」
 と俺は左手で持っていた双眼鏡からタンカーを覗いた。
 右手はもちろん、手袋をしたままでジェットの股間を撫で回すのを忘れない。
 第一、真面目にやってられるかよ。
 俺はジェットと楽しいクリスマス兼新年をドイツで過ごす予定だったんだ。その為の準備も怠りない。手配も済んでいたのに、全てがキャンセルだ。しかも、公園でタンカーの見張りなんざ、貧乏くじもいいとこだ。
 ジェットという現物支給がなかったら、さっさとタンカー沈めてこんな場所おさらばしてやる。しかし、その辺りの俺の心境を汲み取ってジェットと組ませるなんざ何と言うか…見透かされてると思う反面、わかってんじゃねぇかと嬉しくもなる。
 まあ、敵だったらささっと片付けて、何とか予約しておいたホテルに連れ込めばいいし、無事に妖しいところがなかったら、焦らすだけ焦らして程よく煮えたところをゆっくり頂けばいい。
 どちらにしても、美味しくジェットをいただけることにちがいはねえ。
 この間、日本の年末年始のホテル事情は痛いほどに身に沁みた反省が今回は生かされてるじゃねぇかよ。と自分を褒めたくなるね。
 タンカーに妖しい動きはない。
 あるとすれば、俺の膝の上で悶えるジェットの声と躯ぐらいだ。
「っぁぁ……」
 恥ずかしそうに、それでも俺の膝の上で悶えるジェットに意識の半分を持っていかれながら、俺は後数時間で出航するタンカーに残りの意識の半分を向けた。
「待ってろよ。あいつがいなくなったら、可愛がってやるからな」





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The fanfictions are written by Urara since'04/03/08