消化不良1



 今夜のメニューはひよこ豆のスープと、ローストチキンサンド、ほうれん草のサラダだった。フランソワーズもいないし、博士もいないし、冷蔵庫を整理する為のメニューですまないねとジョーは言う。
 別段、カップラーメンでもジェットは構わないのだ。
 グルメ嗜好などほとんど持ち合わせていないジェットにしてみれば、それでもちゃんとした夕食には違いない。
 ジョーはエプロン姿のままジェットの隣に腰を下ろした。
 いただきますと丁寧に手を合わせるが、いただきますという習慣も食事の前に祈りを捧げる習慣もないジェットは既にスプーンでひよこ豆のスープを突いていた。
「あれ? 美味しくない」
 食欲旺盛なジェットが珍しくスープだけを突いている姿に戸惑いを隠せないようだ。現在ギルモア邸の日常の家事労働はジョーが一手に荷っている。
 明日からのメンテナンスに備えて、一日早く来日したジェットと二人きりの夕食の席だった。博士はコズミ博士宅にとある研究の為に訪れていて、明日の昼頃に帰宅する予定なのだ。
 フランソワーズは張々湖飯店でバイトであるし、イワンは相変わらず眠っている。
 どんな時でも、美味しそうに自分の料理を平らげてくれていたジェットなだけにジョーはその様子が気に掛かる。
「いや、すげぇ、美味しいよ」
 ジェットはいつもの笑顔でジョーの心配にそう答えた。
「ひよこ豆嫌いじゃなかったよね」
「ああ」
 博士が好きで何度か食卓には出しているがジェットがそのスープを食べたかまではジョーの記憶にはなかった。無理しているんじゃないかと顔を覗き込むと、その表情は何処かぼんやりとしていた。
 少なくとも、嫌いというわけではなさそうだ。
 どうしたんだろうと、ジョーは自分の分のひよこ豆のスープを口に運びながらそう考えていた。





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