シーツに沈む欲望
「ジェ……ット」 アルベルトの荒い吐息がジェットの耳朶に掛かる。 それだけで、シーツに面した背中がぞくぞくとした寒気を覚え、思わず喘ぎ声が漏れてしまう。 「っ……はぁ」 まるで酸素を求める魚のように大きく喘ぐと、アナルに捩り込まれているアルベルトのペニスの硬さをジェットは感じ取ってしまう。幾度も、アルベルトのペニスを受け入れた其処は自分でも分かる程に綻んでいて、どんな体勢であっても嬉々としてそれを呑み込んでしまう。そんな淫らな自らの感覚すら、高まる快楽の小道具でしかない。 仰向けになったジェットの右足は大きく天上に向けて開げられ、右側面に横になった体勢のアルベルトと繋がっているのだ。 くちゃくちゅという連結した部分から淫靡な音が断続的に流れ出している。 「……、ぃゃああああーー」 更に足を大きく開げられると、ずぅんとアルベルトのペニスが更に奥まで届き、ジェットの奥まった場所にある感じるポイントを突き上げてくる。 零れた声は元には戻せず、更に高い嬌声が濡れた音に被さるようにして部屋を満たしていく。 右手はアルベルトの躯の下に敷かれていて動かすことも出来ないし、仰向けの状態から動けない為、左手でアルベルトに抱き付き縋ることも出来ない。伸ばした左手が引っ掻くのは、湿った感触のあるシーツだけだ。 それでも、ジェットは必死でその湿ったシーツを掴み、喉元を仰け反らせて、与えられる快楽を享受しようとしている。 与えられる感覚の全てが自分に対するアルベルトの愛情の証しであり、その全てをジェットは受け止めたいと願っているから、翌日、声が出なくなるくらい嬌声を上げさせられても、愛される幸せにジェットは眩暈すら覚える。 「ジェット」 荒い鼻息と自分を呼ぶ声に、再び、背中をぞくぞくとした感覚が這うように上っていった。体内に存在する神経系統を流れる感覚を司る電子の流れそのものが快楽というものに上書きされてしまった感覚がジェットを支配する。 こんな状態であっても、アルベルトが欲しくて腰を押し付けるように動くと、次の瞬間、アルベルトは反対に腰を引いた。 「っあ……、ダメッ!!」 ジェットは迷わずに求める言葉を口にする。 アルベルトのペニスによって内壁が引き摺り出される時に感じる快楽が欲しいのと、自分から離れて欲しくないとの二つの欲望から発した言葉である。もちろん、アルベルトもそんなことはお見通しだった。 ジェットが無意識のうちに呼吸を整えようと大きく息を吸い込んだその時、アルベルトは右足をジェットの上半身につきそうになるくらい開げさせ、先端のみ引っ掛かっている状態であったペニスを可能な限り、奥まで挿入した。 「………………ッヒ」 高い笛のような悲鳴を上げたジェットは涙で濡れた瞳を大きく見開いた。 青い瞳が、薄暗い部屋に艶やかに浮かび上がり、そのまま天上を凝視するかのように動かなくなった。 アルベルトは何度も、この動作を繰り返した。 その度に、ジェットの口からは笛の音のような悲鳴にも似た嬌声が漏れ、見開いた瞳からはほろりと涙が頬を伝いシーツへと落ちていく。 何度も、数えられないくらい激しく突き上げられ、ジェットの躯はひくんひくんと飛び跳ねる。 まるで、岸に打ち上げられた魚を動物がむさぼり食らう光景にも似たセックスであった。 何とも、本能的で相手を求める激しさが、静かな部屋の中の空気を熱く震わせる。 そして、アルベルトはそのセックスの終焉に相応しい動物めいた唸り声を上げて、腰を突き上げた瞬間、ジェットの見開いたままの青い瞳が閉じ、シーツを握り締めていた指は力を失い、シーツは指の形の皺を残したまま開放された。 「ジェット」 繋がったままアルベルトはジェットを覗き込むと、ジェットは声を上げようとした形に口を開けたまま、気を失っていた。 聊か、乱暴過ぎたかと思うが、アルベルト自身反省してはいない。 アルベルトが身動ぎすると、ひくひくと痙攣するように動くジェットを愛しいと思うだけだ。 最初は、歯止めの効かぬ自分のジェットに対する欲望に戸惑っていた。顔を見て、触れるともっともっとと、欲望が沸いてきて止められなくなってしまうのだ。 いつも、ジェットには無理をさせていると反省していたのだが、実はジェットは一度もこういうアルベルトの行為に対して、拒絶したことはなかった。むしろ積極的にアルベルトとの行為を求めてくる。 しかし、その考え自体が自分達の関係にそぐわないものだと、最近、アルベルトはジェットから告白され気付いたのだ。 ジェットはアルベルトに求められることに幸福を感じるのだという。だから、遠慮されるとまるで拒絶されている気持ちになってしまうと、そう言われたのだ。 だから、アルベルトは反省も悪いと思うことも止めた。 ただジェットが欲しいと思う気持ちを、正直に隠すことなくぶつける。ジェットもまたそれを全身で受け止め、欲してくれとアルベルトに気持ちを伝える。 だから、こんなジェットの姿を見ても、浮かぶ感情は愛しい。 ただそれだけなのである。 アルベルトがそんなことを考えつつ、ゆっくりとジェットの中から出て行こうとすると、ぴくんとジェットのペニスが震え、アナルがぎゅっと離すまいと収縮をする。 強引に先端を引き抜くと、ぬちゃりとした音がして、ペニスと共に白濁とした液体がジェットのアナルから流れて来た。 ゆっくりとそれはまろやかな白い尻肉を伝い、ジェットの白い肌を浮き立たせる為に使用した黒いシーツへと吸い込まれていった。 ゆっくりと目を開けると、やはりそこはアルベルトの部屋だった。 仕事を終え、ベルリンのアルベルトのアパートまで飛行してきた。時差の為、仕事を終えて帰宅せずにそのまま飛び立ったのだが、到着したのは真夜中であった。 なのに、アルベルトは時差を計算して、ジェットの為にささやかなディナーを用意してくれていたのだ。二人で真夜中にそれを食べて、食べながらも何度もキスを交わし、途中で互いを食べているのか食事をしているのか分からなくなり、結局そのままもつれ込むようにして床で愛し合った。 その後、二人で風呂に入り、風呂でも愛し合い。 風呂を出てから、そのまま服を着ることなくベッドで愛し合った。 時差のせいか時間の感覚が曖昧になっていて、ここに着いてから何時間経ったのかジェットには分からなくなって来ていた。 別に誕生日でも、何でも、ここに来る口実さえあればそれで構わなかった。 誕生日プレゼントというのでなくとも、二人っきりで時間を過ごせれば、それでジェットは満足なのである。 随分、ハードなプレゼントになったなと、ジェットは嬉しそうに笑う。 そして、その向こうには同じように笑いながら自分を見ているアルベルトの姿があった。 鋼鉄の手を晒し、躯も隠してはいない。 ただ、腰にバスタオルを撒いているだけだ。厚い胸も逞しい肩も剥き出しにして、腰にはバスタオルを巻いているだけだが、そのバスタオルを押し上げる存在に気付いてジェットは目を伏せた。 それはジェットにとって目の毒でしかない。 突き上げられた時のあの感触を躯が瞬時に思い出し、自然と甘い疼きが腰の奥から湧き上がってくる。自分はこんなに淫乱だったのかと思うくらいに、アルベルトの躯を見ると欲しくてたまらなくなってしまうのだ。 「ほら」 そんなジェットの様子に気付いていないのか、アルベルトはいつもと変わらぬ態度で近寄ってきてミネラルウォーターのペットボトルをジェットに手渡した。 ジェットは横になったままそれを受け取ると、ゆっくりと上体を起こす。 さすがに、横になったままペットボトルの水を飲むのは難しい。 喉もひりひりとしていて水を見た瞬間、飲みたくてたまらなくなっていた。随分と、声を上げさせられたからなと、先刻の自分の甘ったるい声を思い出して、幸せな気分にジェットは浸った。 500mlのペットボトルを1/3ほど一気に飲み干し、ほうと息を吐き出し弛緩した瞬間、とろりとジェットの体内に保管されていたアルベルトの精液が流れ出てきた。 「ひっ」 ジェットは、その感触に身を竦める。 嫌いではない感覚だし、一人でいるのならばアルベルトに愛された残り香を楽しむ余裕もあるけれど、目の前にはアルベルトがいる。アルベルトは、自分の放ったものをジェットのアナルから流れて行くのを見るのが好きらしく、恥ずかしがるジェットを押さえ込むことがある。 それを考えると自然に躯が竦んでしまうのだ。 もちろん、アルベルトはそんな様子を見逃すはずもなく、その様を隠そうと必死のジェットには見せないように意地の悪い笑みを浮かべた。 ジェットの肩を押すと、アナルに神経を集中させていたジェットの躯は簡単にベッドの上にひっくり返った。それでも、ペットボトルの水を零さないようにと右手を高く上げている。 もちろん、この美味しい状況をアルベルトが逃すはずもなく。 バランスを取ろうと僅かに開いていた足の間に躯を滑り込ませて、体重を重石にそのまま圧し掛かった。 「アルッ!!」 どう見ても、計画的にしか見えない行動にジェットは抗議の声を上げる。しかし、悲鳴のような抗議の声を上げたもう一つの理由は、背中に感じた冷たいシーツの感触であった。じっとりと濡れているその感触を不覚にも、快楽で熟れた躯は敏感に感じ取ってしまっていた。 それを誤魔化す為の抗議でもあったのだ。 そうこうジェットがじたばたしている間にも、アルベルトはつるりと躯を滑らせ、ジェットの股間に顔を突っ込んだ。半勃ちであったジェットのペニスはアルベルトの腰に巻いているタオルと、やや冷たく硬い皮膚に擦られる感覚に悦びの滴を零し、風呂から出たばかりのアルベルトの胸に透明な足跡を残してしまった。 汚れた躯にも一向にアルベルトは構う様子もみせず、まるで冷徹な科学者のように手際良く、ジェットの腰を持ち上げて、尻の肉を掴み左右に広げる。 「っあ……、ヤ、メッ……ろって。っふ」 広げたアナルの入り口は早朝から続く断続的なセックスによって赤く熟れていた。アルベルトのペニスが出入りすることにより引き摺り出された内壁がひくひくと収縮を繰り返し、まるで誘っているかのように見える。 後孔の周囲はぷくりと盛り上り、しっとりと濡れていた。 「っあ、アル……、っつあぁあ」 更に広げるとくんぷという音と共に白濁とした液体がジェットの体内から出て来て、黒いシーツの上に小さな池を作る。 「止せっ……っはぅあぁぁぁ…………っく」 自らの秘密を隠そうとするが、その間にアルベルトの躯が挟まっていては足を閉じられない。 本当にイヤならばアルベルトを蹴り倒してでも行為を止めさせればよいのだが、それも出来ないでいる。恥ずかしい行為だし、止めて欲しいのは山々なのだけれども、アルベルトのジェットにこのようなことをしたいという気持ちを理解しているからこそ、それが出来ないでいる。 愛されているのだと思うと、本気で反抗できなくなる。 ジェットにもアルベルトに好きにさせてしまう自分がいることも冷静に判断できるのに、感情という部分ではそんな自分を否定して、小さな混乱を自分の中で引き起こすから、半端な抗いにしかならないのだ。 「動いたら、確認できないだろう」 アルベルトは息を勃ち上がったペニスに吹きかけながら、感情の篭もらない口調で優しく抗うジェットを懐柔する。これはもう、アルベルトはその気で譲るつもりも、ジェットに譲歩するつもりもないことを伝えていた。 せめて少しでも、とジェットは空いた左手で目を覆う。 だからといって恥ずかしさがなくなるわけでもないのだが、せめてもの抵抗であった。 アルベルトはそんな様子を確認すると遠慮なく、右手を綻んだジェットのアナルに入れると再び、くぶうぅと音がして指の容量分押し出されたような格好で白濁とした液体が溢れて来た。 「俺が此処に、どれだけ注ぎ込んだか、確認しとかないとな。それが済んだら、風呂で綺麗にお前の此処も洗ってやろうか。ジェット」 アルベルトの声は先刻の無表情な声とは変わって浮かれた口調である。少しは抗ったジェットではあるが、結局、自分の要求を受け入れてくれたことが嬉しくてたまらないのだ。 やや強引な恋人のことを冷徹、無表情と思っている人が多いようだが、自分に対してだけは豊かな感情をぶつけてくる。特に、セックスの時にはその浮き沈みが激しく、ジェットを翻弄する。 でも、こうして感情をぶつけられることがジェットは嫌いではない。 実際に、恥ずかしい行為なのだが、アルベルトに触れられてジェットは感じているのだ。 その証拠に、ペニスが硬くなっていくのが分かる。 「っひ………………、ひっ、ぁあぁぁっ」 指は二本に増やされ、更に奥へと進み体内にある自分の残滓を全て掻き出してしまおうかという勢いでジェットのアナルを引っ掻き回すと、ジェットの熟れた躯は悲鳴を上げた。 そう、アルベルトのペニスが欲しいという悲鳴を辛うじてジェットは飲み込む。 アルベルトを求めることが恥ずかしいのではなく、こうしてセックスの名残りともいえる体内にあるアルベルトの残滓を見られてしまったからなのだ。 自ら尻の肉を広げ、アルベルトを誘うこともある。 恋人同士のセックスだ。 ジェットが受け入れる側だとしても、主導権を握るセックスをすることだって少なからずあるのだ。セックスという行為自体は、確かに恥ずかしいと思うこともなくはないが、今の恥ずかしさとは種類が全く違う。 くぷっ、ぶちゅ、ぶぶぷぷっと液体を掻き出される卑猥な音が止まる様子は全くない。それだけ、アルベルトの精液を貪欲に呑み込んでいる自らの肉体の淫乱さにジェットは酩酊を覚える。 二人のセックスをビデオで撮影し、後で鑑賞するような行為の方がよっぽどマシだ。多分、そんなことをしたらしたで自分達は興奮して、更に激しいセックスに溺れるのだろうけれど、これは一方的に自分だけが恥部を晒しているのと同じだ。 そう、さしずめ自慰行為をビデオ撮影して、アルベルトと二人で見るという行為と似ているのかもしれない。 そんな感覚がしてならない。 恥ずかしくてならないと顔を覆う自分とその下で冷静にそのようなことを考える自分がいる。思考が分裂し始めるのは、自分が理性を放棄しようとしているという危険信号なのである。 こういう時は、乱れた後で自分がどう乱れたのか記憶が飛ぶから好きではない。どんな狂態を晒していたとしても、記憶があった方がジェットにとってはよいことなのだ。何故なら、BG団時代に、眠らされたまま幾度も性的な玩具にされた経験があったからだ。 どんな狂態であったとしても、恋人とのそれだとしたら、覚えていたい。 「っあ……、アル、待って」 背中の辺りに濡れた感触が触れた。 シーツが湿っているという感覚ではなく、水が零れているかのように尻から腰に掛けてじっとり濡れている。 「ベッドが、濡れちまう」 幸いジェットの声を聞いて掻き出す行為をアナルに指を入れたままの状態ではあるが、中止してくれたので、ジェットは何とか台詞を綴ることが出来た。 「かまわねぇさ」 「使い物に……、ならなく」 「大丈夫だ」 アルベルトはジェットのアナルから指を抜こうとはせずに、伸び上がってジェットの胸の辺りに顔を持ってきた。薄いジェットの胸の上に顎を乗せてにやりと口の端を片方だけ上げて笑う。 「お前さんが来る前はいつも、シーツの下に防水シートを敷いておくのさ。ジェットは沢山のミルクを零すからな」 そう言われて、ジェットの顔は赤く染まる。目元は隠しているから分からないが首筋が真っ赤になっているから、恥ずかしいと思っていることはアルベルトに分かってしまう。 知らなかったのかと付け加えると、ジェットの躯が震えた。 その反応がアルベルトは嬉しくてたまらない。 けれども、そろそろ開放してやろうかとも思う。 「心配せずとも、たっぷりミルクを零してくれ」 そう言うとアナルから指を引き抜いた。 「っああ」 名残り惜しいというような声が上がり、内壁が纏わりついてきた。そして、抜いた瞬間に残りの白濁とした液体がまるでジェットがおもらしでもしたかのようにじわじわと流れ出てシーツに見事な染みを作る。 アルベルトはそのコントラストを目で楽しんだ後、ジェットから離れた。 「さあ、シャワーでも浴びて来いよ」 突然、開放してくれた恋人の真意を測りかねておずおずとジェットは目を覆っていた腕を外して、アルベルトを見た。目尻に涙が溜まっていて、ついそれを舐め取ってやりたい衝動にかられるがアルベルトはぐっと堪える。 また、どうせ泣かせることになるのだから、その時にじっくり味あわせてもらえば良い。 少なくとも、今は土曜日の夕方だからジェットが帰るまでには24時間という時間がある。 「ジェットが零したミルクでぐちょぐちょのシーツを取替えて、空気を入れ替えて、何か食べるものを用意するから、お前さんはシャワーを浴びて……。そうしたら、誕生日のリクエスト通りにベッドで食事をするといいさ」 確かに誕生日のプレゼント代わりにベッドで過ごしたいと希望したのは自分なのだが、過ごすというよりも縫い留められている気がしないでもない。 「随分、サービスがいいんだな」 ジェットは先刻の行為の意趣返しとばかりに、皮肉を込めてそういうと、いつも俺はお前には特別サービスしてるぜ、ベッドの上ではとキザに言い返してくる。 面白くないジェットは、手にしていた半分以上残ったミネラルウォーターをベッドの上で逆さにした。零してはと気を使って必死で耐えていた自分のせめてものストレス解消である。 ジェットの座っている場所は体重でマットレスが沈んでいるので、必然的に其処に水が溜まる。 ジェットは空になったペットボトルをアルベルトに投げつけると、ゆっくりと水をカーペットの上に零さないようにベッドを下りる。 「サービスすんなら、ちゃんとしろよな。ったく、途中で放棄するんじゃねぇ」 とジェットは勃ち上がった股間を隠さずにアルベルトの目の前に晒した。もちろん、快楽に耽溺している躯はこの程度で満足できないからだ。もっともっと、アルベルトで満たして欲しい。 先刻の行為に感じてしまうことも恥ずかしいが、それ以上に求めていると分かっていて試合放棄して焦らそうとするアルベルトも憎らしい。 「ああ、誕生日のプレゼント代わりなんだから、今夜もサービスさせてもらうぜ。ただし、その為に、綺麗にして来いよ」 「ああ、ケツの中まで綺麗にしてくるさ。あんたの鷲鼻突っ込ませてやるよ」 ジェットはそう言うと、足早にバスルームへと消えて行った。 そして、そんなジェットの姿に笑いを隠せないアルベルトの姿があった。 本当に、素直なのか素直じゃないのかよく分からない恋人だ。あんなに情交の名残りを見られることを嫌がったのに、今度は欲望を隠すことなく自分を平気で誘うのか、未だ理解できはしない。 けれども、そんなジェットはとてもジェットらしい気もする。 誕生日というけれども、いつもの二人で逢う一日とあまり変わらない。 そう、アルベルトのアパートにジェットがやって来たとしても、その八割をベッドの上で過ごしている。何処にも行かず、二人で互いの存在を確かめる行為に終始するだけなのだ。 だから、誕生日といっても特別に変化があるわけではない。 ただ違うのは、冷蔵庫の中にジェットの誕生日プレゼントが入っているということだけである。 きっと風呂上りに、飲み物を取ろうとジェットは冷蔵庫を開ける。そうして、自分宛のプレゼントを発見するのだ。子供のように目を輝かせて、ありがとうと情欲で赤く染まった口唇で礼を述べる。 少年の瞳の輝きと、艶かしい口唇の動きのギャップに多分自分がジェットを更に欲してしまう時間が来る。 その後は、いつもと変わらない休日がやって来て、二人の時間は過ぎていくのである。 多分、いや、きっと……。 シャワーの音を聞きながら、アルベルトはそんなことを考えていた。 |
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