イケメン先生
「どうして、俺らが…こんなことをしなくちゃいけないんだ」 とジェットははみ出したアンダーシャツを黄色いズボンの中に仕舞い込んだ。アルベルトは黒いトレーニングウェアを着用して、口を真一文字に結んでいる。 「どうしてって…仕方ないだろう。この幼稚園にいる人間をガートするにはこの方法が一番、不自然じゃないからな」 「って言ってもさ」 とジェットはぶつくさ文句を言う。 子供は嫌いではない、どちらかというと好きな方だが…。しかし群がってくるとなれば別だ。いくら不死身のサイボーグだとはいえ、延30人もの園児を肩車して、一人当たり運動場を1周すれば疲れるってもんである。 二人の足元には砂場があり、女の子達がままごとに興じていた。 「こういうのはさ。フランとかジョーが似合いだろう? どうして俺達なんだ。俺達が居ることの方が不自然じゃないのか?」 「そうだとは思うが、あの二人は別行動で、そいつはフランソワーズにしか出来ない任務だからな。残ってる俺達でなんとかするしかないだろう。まあ、あと数日の我慢だ」 とアルベルトが言い終えないうちに、足元の女の子達がアルベルトに声を掛ける。 「アル先生、アル先生はお父さんの役よ。今日は、誕生日だから子供のプレゼントを買って帰って来るところから、はじめるのよ」 アルベルトは仕方がないと肩を竦めて、見えない玄関のインターホンを鳴らす振りをする。 「只今、今、帰ったよ」 よくやるよと相棒が器用に女の子達のままごとの相手をしているのを見ていたジェットに、背後から男の子達が飛び掛ってくる。 「ジェット先生、今度はサッカーしようぜっ!!」 「ほらね。あの二人仲いいでしょう?」 更に遠めに眺めていた保護者が数人……。 「園長先生の話しだと、病気で長期療養中の先生の代わりっておっしゃってたけど…、でも、妖しいわよね」 「ああ、あたしなんか、昨日二人で仲良く一緒の車で帰るのを見ちゃったわよ」 「うっそーーーっ!!」 「あたしなんか、スーパーで買い物してるのを見かけたわよ。しかも、一緒に……」 「って、同棲してるの?」 「いゃだぁ〜、同棲だなんて」 保護者に楽しい話題を提供しているとも知らず、二人は園児に遊ばれ続けていた。 もちろん、二人が任務を無事に果たし姿を消した後には、駆け落ちしたのだとの噂が広まっていたのはいうまでもないことであった。 |
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